陶淵明 雑詩其の一人生無根蔕 人生は根蔕無く飄如陌上塵 飄として陌上の塵の如し 分散逐風轉 分散し風を逐って轉じ 此已非常身 此れ已に常の身に非ず 落地為兄弟 地に落ちて兄弟と為る 何必骨肉親 何ぞ必ずしも骨肉の親のみならんや 得歓當作楽 歓を得ては當に楽しみを作すべし 斗酒聚比鄰 斗酒、比鄰を聚めよ 盛年不重來 盛年 重ねて來らず 一日難再晨 一日 再び晨なり難し 及時當勉励 時に及んで當に勉励すべし 歳月不待人 歳月は人を待たず 以下は大好きな一海知義さんの解説です♪ 「-人の命はつなぎとめる根もなく、風に散る路上の塵のようなもの。 ちりぢりに風のまにまに転びゆく、そのときはもはや常の姿は保ち得ぬ。 だから、生まれ落ちれば誰もが兄弟、血のつながりなどなくともよい。 歓楽のときを得たらたのしむのが当然、わずかな酒でも近所の人を集めて飲もう。 若い時代は二度とは来ない、一日に朝は二回も訪れないのだ。- そして『時に及んで当(まさ)に勉励すべし、歳月は人を待たず』とうたいおさめられるのです。 だから「勉励」は日本語の勉強という意味ではありません。 人生の充実のために若いうちに努力しよう、とうたっているのです。 楽しめるとき思いきり楽しむ、ということもそのなかにふくまれるような「勉励」です。 あえていえば、無理をしてでも楽しんでおこう、というふうに私には読めます。 陶淵明は頽廃的な詩人ではありませんから、歓楽といってもデカダンスなそれではないでしょう。 しかし「勉励」がごりごりの勉強でないことももちろんです。」 (『漢語の知識』一海知義 岩波ジュニア新書) |